仲間がいなくて 仲間がほしいともがいていたら いつの間にか かけがえのない仲間がこんなにたくさん この世にはレールがないことばかりで たとえば いい詩が書きたい とか言うと ジャア本ヲ何百冊モヨメ とか 君ノ詩ニハ才能ガ感ジラレナイ云々 とか そういうことを言われてしまうけど 負けないで 自分の声を信じて 自分なりの進み方で行けばいいんじゃないか コンナノハ詩ジャナイ とか 色んなことを言われながら
CD
アップルミュージックとかではなくて ましかくい透明なケースを 指がべったりつかへんようにこわごわ開けて うすぺらいまんまるいのを 親指でぐと押して人差し指とでつまんで しかるべき段差に嵌め込んだり そおっと隙間に差し込んだりして 吸い込まれる気持ち良さとうずうずの気持ちと おんなじ デッキの機械音と そうやって再生ボタンを押して すうっと広がる音色の灯り ひとつの人間が たったひとつでこんなにも ひとつというのを慈しむんやな 慰めるんやな 私はいっつもそれを忘れるみたいで アップルミュージックで横着してしもて それまで厭わしくなったりして 永遠に見つからんもんを探しに行ってしまうんやけど 忘れたくない こんなにやさしい音色が ここにちゃあんとあること
夕凪
ずうっとこのくらいの夕方が続けばいいのに 束の間の深い昼寝から覚めれば朝かと思うほどの 静けさに鳥の鳴く声がなにを告げるでもなく浸みてきて これから暑くなっても寒くなってもいいと思える これから明るくなっても暗くなってもいいと思える 開け放した窓の下に大の字で寝そべってみて なんとなく狭くもなく広くもない空を見上げて さみしくもなくしつこくもない風の音を聴いたりして 向こうで一日中点いているスタンドライトの薄黄色にごまかされつつ さてこれから来るのは夜なのか朝なのかと ためしに待ってみるような気持ちで微睡んでいる こんな夕方が ずうっと続く夢をみたいようなみたくないような そんな夕方
おやしらず
いたい いたいよ いたいの ここが いたいから やさしくして いたいから ゆるして いたいから しんぱいして ちょうどいいぐあいでいいよ そこまでじゃないから いたい いたいよ いたいの ここが そこまでじゃないよねって いわないで そこまでじゃなくても しんじてほしいの いたい いたいよ いたいの ここが ないてばかりいないから いつもはげんきにわらうから いまだけは いたい いたいよ いたくて しんじゃう
ひといき
音楽も聴かないで 窓を開けて 空を見上げて 洗濯をして 暇でもいいんじゃないかな そんな言葉を くれてありがとう なにかを受け入れる器になるから 暇ってのもいいんじゃないかな いいのかな 風があまりにやさしくて 漠々とさびしい野っぱらに こんな眺めもわるくないなと 呟いてみたくなる 日暮れ
せんせいわたし
せんせいわたし そんなに苦しまなくても いいような気がします せんせい、わたしが来ないのは 早々に飽きたのだと 思われるかもしれませんが 明日は必ず伺います せんせい、わたしは傲慢です それでもちゃんと考えて 水道水の味を言葉にするくらい 向き合うつもりでいるのです
この夜
もう少しだけ終わらせたくない夜があります 友たちと語り明かして、それで欲張って独りになりたくなる朝です じぶんは独りぼっちだと、きっとみんなが思っているけれど 今晩ずっと一緒にいたということを ひとつ優しい記憶にしてはくれませんか ねえ わたしも 変わってしまったと思う、人も繋がりも 一晩一緒にいてみたら 変わらない強烈な輝きまで辿り着くのだ と信じてみようと思う そんな優しい夜でした ねえ また越せない夜が足音をたてたなら この夜に戻って来てよ ただ一緒にいた夜 寝落ちた夜 シメがラーメンの夜 春雨が朝陽の温度で街をぬらして見送る この夜に
この街
このところいつだって今にも泣き出しそうにして ほそい煙を掴むごとくに 微かなひとのぬくもりを命綱にしている そんな友が この街で一晩を過ごしたらしい 見知らぬ誰かの懐で すこしは涙を忘れたか 昔のように笑ったか あすの晩も来るそうだ そうだこの街はひとりぼっちが集まって おそろしいおそろしい夜の海を 力を合わせてみんなで越す わたしは海原とおくとおく安らかに眠りゆく戦士たちの ひとりひとりの名前をよんで ささやかなピアノの音色を選んでお線香にして じっとじっと朝陽を待とう
落ち葉の手記 音痴の鳥より
森で一番若いかつらの木 そこへ行けば3べんに1回は彼に会えます 彼は毛むくじゃらの奥にお月様をふたつ浮かべて私を見上げますが 目が合うのはいつもすこし 私は、彼に会うとほんのすこし、鳴いてみることにしています 彼は、陽炎の音みたいな音色でいつも独り言をします そうして、うんうんそうかそうかといった具合にうなずくのが癖のようです 彼はいつもこの村の集まりをさぼって来ています でも私には、それが彼の仕事なのだと分かるのです 彼も、私が頼りない枝に宿るわけを知っていそうなかんじです 昨夜もここに来ましたがお星様までひとつとない夜でした まっくら闇にすこし安心して はじめて思いのかぎりなきました もうこれきりにしようと思ったその時 陽炎の音色が地面のほうからあらわれて 思わず震えた私の耳に シバシバさせたふたつのお月様がまあるくまっすぐに差し込んで うつくしいねいろだ 絶対にそう言ったのです 私は葉の付いていないよくしなる枝を、 何度も何度も、何度も何度も揺らして揺らして、 こっそりこっそり嬉しがりました 「うつくしいねいろだ」 美しい音色だったな
名残雪
ましろい梅の花びらが 名残雪のふりをして とおく霞むまひるの月を ただ一心にその身に浴びて 憧れは銀に燃ゆ 白くつめたい涙を ゆっくりゆっくり手放すあなたを 涙と変わらぬおおきさで 涙よりもすこしだけゆっくりで むげんの春をやどらせて ただ抱きしめてみたかった 憧れは銀に燃ゆ モノクロの水溜りにねむる
うみの道理
あなたは私が悲しい詩を書くと思っているのでしょうが そんなあなたを詩に書きたい 溢れんばかりのみずを静かに湛えたうみ 私も、隣に座る飲ん兵衛も、みんなうみにぶらさがっている そんな、みんなの宙ぶらりんの足をてとらぽっどにして、 そうしてそこに、あなたがにこにことすわっている かもめを見てはかもめだと言い からすを見てはからすだと言い 小さなみずしぶきも逃さずその身に受け止めて のぼりしずみゆく、そらの色を見逃してやって そうしてあなたは、宙ぶらりんの者どもと対峙することになっている あなたは私を選んでなみだを飲ませたが それがうれし涙かかなし涙か分からないで しょっぱいみずをよく飲んで 私はそうして生きている あなたは私が悲しい詩を そんなあなたに詩を書いた
T c
無性に書きたくなった。
ずっと、怖い。自分の作り出したものを世間様が見る、それで、私の価値が決まってしまう気がする。
これなら大丈夫かな、と思えるものを投稿してみる。しばらくして見ると、随分気取っていることが分かる。進行していく心地良い嘘つきが、気持ち悪くて遠ざける。
なんでみんなそんなに気軽に自己発信してしまえるんだろう。羨ましいような、妬ましいような、そんな醜い気持ちがひそひそ話。
白洲正子が、
「若いうちは色々の失敗をしてみるのもいいと思います。恥をかくことがこわいようでは何も実行出来ません。なんにも覚えはしません。」
と書いているのにぎくりとして、どこまでが若いうちというのか、とひやひやしながら、もっと書いてみたいと思いました。
リンクに使った「Tread carefully」 ありきたりな言葉ですが、「君が生きた証」(英名 Rudderless)という映画の作中歌「Sing Along」の歌詞から抜粋しました。主演のビリー・クラダップが歌いあげるこの言葉は、世界中で使われているであろう「Tread carefully」の中で、私がいちばん好きな光を放っていると思うのです。