あなたとあなたとあなたのための日記

あなたは酔った頭で家に帰り
電気もつけずに寝てしまい

あなたはまだふらふらの頭でスマホを探し
状況があまり進んでいないことに退屈し

すべての物が会話しながら生きている床に
ぽーんとなんとなく転がって一緒になり

あなたは自分が
ここに転がる はさみと ドライヤーと スプーンと くつ下と・・・

あなたはそれらの名前を嫌がって
あなたはただ、ただ、生き生きとした自分の仲間を見、
そして 転がる 仲間が見えなくなって 天井が見える

そうだ 仲間を仲間なんて呼んでるうちはだめなんだ
天井が見えてるくらいがちょうどいいんだ

あなたと あなたと あなたと一緒に
あなたは天井を眺めている

代謝

歌をうたい始めたら
電話がなって 夜が明けていました

体を動かし始めたら
ばたんと転んで 立ち上がれなくなりました

文字を書きつけ始めたら
なにもかもが遠くなって なんにもなくなってしまいました

どこまでもどこまでも
どこまでもどこまでも
今生きるために要ることをしてないと

歌で明けたら体を果たして文字を書く
なんにもなくなったところに

ひとつ 音を
ひとつ 肉を
ひとつ 言葉を

あたえてやって
そこからひとつひとつ立ち上がったら
歌で明かして体を果たして文字を書く

行け行け私
そうやって全部遣い果たしてしまえ

凪ぐ君へ

一緒に生きよう
は誓いじゃなくて
事実です

あなたがくれた金平糖は
「忘れな草」色なのでもなく
「忘れな草」味なのでもなく
ただ 忘れな草

忘れないよ
君がここにいたこと
君のうしろの窓から光が
優しい金の縁取りをして
肌の焼ける匂いあわかに
ブルーに変わっていく時間

君のはねた髪先の光の一点と
君の鼻に置かれた眼鏡の丸み
それくらいしか覚えてないけど

それでもちゃんと
忘れないから

帰郷

故郷に帰る

あなたはぼうっとした頭を抱えて 電車を降りてバスに乗る

ふと あなたは何年も何年も前に トリップしたような錯覚に陥る

バスが動き出す

雨粒がまだら模様の窓越しでも やはり街の様子は少しずつ変わっているのが分かる

あなたはそんな街を見てもやはり 昨日も一昨日も乗ったようなバスに揺られている

故郷に帰る
母が迎えてくれるはずの道を一人

雨粒越しに見える街が どれだけ見知らぬものに変わっても 最終バスに連れてゆかれるあなたは ここが生まれた時からずっといる街だと はっきりと分かる



へその緒をたどって胎盤まで


あなたは 割れんばかりの頭を

いつものように沈めながら

ここではない どこか遠くへ 想いを馳せる


あなたは どうにかして息がしたくなる

あなたは 自分がまだ子宮の中にいることが分かる



ねえ お母さん 私はもう ここを出たいと思っています


肉と音から失礼します

壊れそうだな
肉と音が繋ぎ止めて
あとはなんにもないみたい

どこにもつれていかないで
あなたはわたしの世界のよすが

どこかで聞いた言葉を吐いて
どこかにいそうな声を出し
どこかで見たような身体を纏って
誰かが作った哲学みたいな知識でまわしているのよ
これを

反抗してみたってそれは反抗でしかなく
こういうもののどこであなたに触ればいいのか
どんな声でどんな身体をしてどんな言葉でどんな規則で

なにを借りてもどう纏っても怖くて怖くて
壊れそうなの
わかるかな
なんにもないみたいな気がするの
多分 なんにもないと思うの

生きていてよとか死んじゃだめとか
こんなもので狂ってるけど

どうかわたしをひとりにしないで
お願い
なにかをわたしと思っていて

YES

どんな哲学書も陳腐に思えてならないんだ
って君が言う

哲学書は 君の 私の 最後の砦だと思っているから

はっきりと感じる まずいってこと

ねえ そっちへ行かないで
一緒に革命をおこしてやろう

Don’t you know it’s gonna be alright?
って陽気に歌うアイツのこと

YESって皮肉で見返してやろう

あなたにとっての alright は私たちにとっての alright ではありませんでした

それだけのこと

君は君の alright をつくってやれ
私は私の alright を君の背中の側でやる

ね だから そこはまだ最後じゃないと
なだめすかせるチャンスが欲しい

殺人

私のどのへんが普通とどのくらい違うのか
が知りたいんですって言ったら

普通ってなんでしょう?
って言われた

人間というものを人間にするために
薬を出す人種に訊いているんだから
お前それはないだろうと思った

私もあなたもみんな
そうやって人を殺していくんだ

隙間

詩を書いた
生きるための隙間ができた

自分の命を一本のろうそくの炎にして彷徨う君が
気持ち良い風の吹いていそうな高い丘の上まで足を運んで
ふわあと吹き上げる美しい突風に身を任せるような
そんなことがあったなら

涙が流れてすぐに
そんなことがあったなら 残された自分は
の涙であるのに気がついて
涙はすかさずひっこんで
苦し紛れに泣き声ばかりを上げている

しっかりしてくれ私
のための泣き声みたいな詩

恋愛

腐っていなさそうなものを食べること
息をするために鼻水を啜ること
お手洗いに行って便器を汚すこと
美容師の指に私の髪の毛だったものが
何本も何本も絡みつくこと
この人じゃなくあの人に会いに行くから
って古めのカミソリを使って毎回出る汚めの血
脇汗なんか掻きもしないし臭くもないですみたいな
顔しながら掻かなくちゃいけない臭い脇汗

恋愛っていうのは
そういうのとおんなじところに並んでて

一週間放置された死体に生きている
人間ホモ・サピエンスの本質を

想像しながらあなたの目を覗き込んだ時
そこには恋愛もなにもありません

3秒前の大革命

ごめんなさい
私今まともに悲しむこともできないで
それでもどんな言葉も刃物になるの

ごめんなさい
とてもじゃないけど私いま
人のことどうしても構ってられないの

そんなのでどうやって
どうやってお金をもらって生きていくのか
私も不思議で困っているけど
死んでしまうよりマシだから
全然生きていたいから
とにかくぼおっと生きているのよ

ごめんなさい
あと少しでも傷つくと
戻ってこれない気がするの

ごめんなさい
歯がね いつでも 0.1ミリ 浮いていて
カタカタ カタカタ いってるの

それでもせっかく生きるから
生きるわがままやるんだから
わたし笑っていなくちゃと思っているの
無理して笑うんじゃないのよ
いま辛そうにすることなんて誰でもやれることだから
この状況でどうやって笑うかに挑戦してるの
いつだって革命をおこしてやるって思っているから

ごめんなさい
それでも一応言っとくわ
私の目は最近いつでも
大号泣の3秒前


どうして

どうしてお前は詩を書くのかと
聞かれます

あんなおぞましい文章曝すなと
言われます

とってもよく分かります
私もなんで書くのか正直分かりませんが

楽しくて笑う時 ああ笑っているなと思うように
悲しくて泣く時 ああ泣いているなと思うように

詩を書いている時は
どうやって息をしようかと考えなくて済むわけです