スター

今日のこと 忘れたくない
星になりたいと思ったこと
あなたを星にしたいと思ったこと

私はあなたの星になりたい
太陽でもなく 月でもなくて
小さな小さなひと粒の

星になりたい 星にしたい
一番星でも流れ星でもなくて
涙にも滲まずにちゃんと見ている星

見ているから 見ていてほしい
星になるから 星にして
そういうあなたのスターになりたい

そのまま

 がんばって    言うとおり     信じたいと思ってて
      あなたの言うとおり あなたが信じたいとおりに
                    なるべくこんなに がんばるよ

      私だって言うとおり     信じたいと思ってて
どんなことを考えても言うとおり     信じたいから
               ここにしかいられないように 立つんだよ

    あなただけが言うとおり     信じたいと思ってて
 どこにも行かないで言うとおり              ここまで来たのに
         賢くなるより     信じたいから   ここまで来たのに

          言うとおり     信じたい     私がここにいて
                     生贄のあなたに  会いに来たのに
                        どうして 
                         どこにも 
                          なにも 
                           ないんだろうね

食べても食べても飢えているよ

食べても食べても飽きたりないんだ
どれだけ食べたかヒトに言うのは恥ずかしい
食べても食べても燃えちゃうんだ
こんなんじゃない あんなんじゃない こんなんじゃ終われない

食べても食べても食べようと思うんだ
あれもこれもあなたもこの人もあの人も全部全部
食べ尽くしても燃やし尽くしても全然足りない
足りない足りない足りない足りない

足りないと不安でどっち向いていいか分かんなくて
怖くて震えてお布団になっちゃうんだけど
食べて食べて食べて食べて
足りない足りない足りない足りない

足りない

とおく とおく 遠足へ行ってしまったあなたへ

わたしは腰も痛くて
あなたが水とお裁縫道具と1、2冊の小さな本と手拭いと
それからマドレーヌ
そういうものを持って遠足に行ったこと
わたしはそれでも覚えていて

伏せる床の堅さに
わたしはしがみついて祈ることしかできないけれど
どうか無事に帰ってきて
なにも失わないで帰ってきて
なにも失わないで帰ってきて

ペットボトルになみなみ入ったきれいな水と
きっちり隙間なく収まったちいさなお裁縫道具と
手垢のつかないまっさらな1、2冊の文庫本と
アイロンがあたってきっちり四角に折れたままの手拭いと
それからマドレーヌ

賞味期限の切れないマドレーヌを
そういうものの中に忘れていたみたいに
帰って来たあとで見つけて
照れて笑って申し訳なさそうに食べるあなたを
見たい

逃げない詩

目を覚ましたとき たしかに音はどこにもなくて
乳白色の肌触りのするひんやりした光が部屋にいた

乳白色は見えている一切のものと
 そうでない全てのこととの間にぬるっとした膜をつくっていて
その内側で 全てのものは羊水に浮かんでいた

半分空のペットボトルも昇ることがなく
重たい机も床にくっついていなくてよかった

全てのものが静かに息をしていて
浮かんでいる自分を見たり見なかったりしていた

私はそれを眺めていた

床を圧して起き上がって歯を食い縛る
鉛筆を削って二重線を曳く
昨夜食べたものの痕跡をここに残すのだ
拳をかたくかたく握って
どうしてもこの膜を突き破らなければならないのだ
外ではどうやら彼らは昇るかくっつくかしなければならないものらしい
私はどうしてもあなたをお前たちと呼びたくない

出かけてくる
必ず帰ってくる

寝息

よく 耳を澄ませて 聞く 寝息
この世の全ての音が重なった 黒
みたいなひとつの音 ながーい音に
よく 耳を澄ませて 探している

そこにある 濃淡を
あなたがつけたひっかき跡と
深い深いどこかから来る寝言と
寝がえり みたいな革命の音

換気扇

詩を書いてみてもいいですか と
室外機の音に訊いてみる ブーン
これは私の部屋の音じゃない

詩を 書いてみてもいいですか
私はあなたに手紙を書いて
自分の字がとても好きになった

私の部屋には換気扇の音がする フワー
私はこの音と二人きりで過ごすと決めたんだ
ずっと ずっと

まるぽちとドライホモサピエンス、そして黒猫

彼女は部屋を右往左往する
頭を振ってみても太陽を直視はできないし
何度起き上がっても太陽は二度と巻き戻ったりしない
黒猫が静かに太陽を観ている
私は息を潜めて黒猫だけを見る

彼女は6畳の部屋の壁までも歩く
天井まで歩けたらいいのにそれはできなくて
でもけして哭くことはしないでいるのを
私は知ってる
黒猫が啼いても彼女は哭かない

彼女は腕を上げた刹那全てを失う
黒猫がただこちらを視て
私ははらはら涙を飲んで
彼女はどうしても強く拳を握れもしないで
ただずっと天井を目指しているのを
黒猫は無視する

彼女は壊れた機械仕掛けの軀を叩いて叩いて
それを抱いて潰すように頬を寄せて
疲れてしまった目をみひらいてぼおっと
宙に浮かぶまるぽちをみつめている

私にはそのまるぽちは見えないし見たくもないし
黒猫にはそのまるぽちは視えなくてもそこにあるので
あるので
彼女はただそれをみてみつめて輪郭のぼんやりの世界に向かって走ろうとしているのだこの6畳の床板が剥げるほど

それを私は知りたくない
黒猫はただひとりこの世界の王者であって
彼女はどこまでも激しくどうしようもなくただひとり

ひとりとひとりをベランダの柵の上に
並べて
置いて
私は床に這いつくばってそのままドライホモサピエンスになってやる

私は、ファッションで詩を書いているかもしれない

私は、ファッションで詩を書いているかもしれない

ある人について、
「人の愛し方にセンスのある人」と言ってみて、
そうだと思ったが、

”人”が何かも ”愛”が何かも
”愛”と”愛する”の”愛”が同じなのかどうかも
”センス”が何たるかも
カタカナが一体何なのかも
分からないで

ただ、誰かのことを、
「人の愛し方にセンスのある人」
とか言ってみて、

それがしっくりくる気がしたから
それがなんだかイイ感じだったから
その”洋”服が似合う気がしたから
それを選んだ自分をいいじゃんと思ったから

それで満足しかけたのでした、
否!

”ファッション”が何かも
”詩”が何かも分からぬうちに
書き始めるんじゃない!

そう思いましたが、
書かずにはおれないのでした

ただ 分からないことを分からないままに
その言葉の羅列を良いと思っています
というだけの慣習と広告のハリボテを
自分が触れてきたもののどうしようもなさを
露呈しているより他
ないのでした

ぬくもり

誰かと一緒にいるんだね
私は昨晩涙を見たよ
ひとりぼっちの涙を見たよ

「みんな敵だと思ってた」
そうだね 私も敵だと思う
みんな敵だよ 泣かないで

それでも私は涙を見ていた
ひとりぼっちの希望の涙
絶望が別れる音がした

とても乾いた音だった
耳をすませて聞いたあと
私も静かに立ち去った

オリオーンの歌

言葉 なんにも聞こえない
言葉 なんにも出てこない

夜は風が気持ちいいよ
それっていうのも冬だから

静かに歩いてみるんだよ
なんにも鳴らさないように

体がなんだかすうすうして
地面のでこぼこを数えるよ

いち、に、さん、し、オリオーン
真っ暗闇に オリオーン

幸せになれ オリオーン
明日いい日になるはずだ

いつだってそこに オリオーン
君がいるから大丈夫

いつだってビジホ暮らし

換気扇の向こうから嵐の音が聞こえてる
そこはあの日のビジホみたいなユニットバスで
あの日のビジホに私物がたくさん たーくさん置いてあって
滑稽で

私はここに住んでいるというより借りていて
だからおうちは別にあって
(ま、どこに帰るか知らないんだけれど)
私はそこに帰ればいいからね

だからいま いつだって特別なんだ
どんなことがあっても
いつだって特別なんだ