逃げない詩

目を覚ましたとき たしかに音はどこにもなくて
乳白色の肌触りのするひんやりした光が部屋にいた

乳白色は見えている一切のものと
 そうでない全てのこととの間にぬるっとした膜をつくっていて
その内側で 全てのものは羊水に浮かんでいた

半分空のペットボトルも昇ることがなく
重たい机も床にくっついていなくてよかった

全てのものが静かに息をしていて
浮かんでいる自分を見たり見なかったりしていた

私はそれを眺めていた

床を圧して起き上がって歯を食い縛る
鉛筆を削って二重線を曳く
昨夜食べたものの痕跡をここに残すのだ
拳をかたくかたく握って
どうしてもこの膜を突き破らなければならないのだ
外ではどうやら彼らは昇るかくっつくかしなければならないものらしい
私はどうしてもあなたをお前たちと呼びたくない

出かけてくる
必ず帰ってくる