彼女は部屋を右往左往する 頭を振ってみても太陽を直視はできないし 何度起き上がっても太陽は二度と巻き戻ったりしない 黒猫が静かに太陽を観ている 私は息を潜めて黒猫だけを見る 彼女は6畳の部屋の壁までも歩く 天井まで歩けたらいいのにそれはできなくて でもけして哭くことはしないでいるのを 私は知ってる 黒猫が啼いても彼女は哭かない 彼女は腕を上げた刹那全てを失う 黒猫がただこちらを視て 私ははらはら涙を飲んで 彼女はどうしても強く拳を握れもしないで ただずっと天井を目指しているのを 黒猫は無視する 彼女は壊れた機械仕掛けの軀を叩いて叩いて それを抱いて潰すように頬を寄せて 疲れてしまった目をみひらいてぼおっと 宙に浮かぶまるぽちをみつめている 私にはそのまるぽちは見えないし見たくもないし 黒猫にはそのまるぽちは視えなくてもそこにあるので あるので 彼女はただそれをみてみつめて輪郭のぼんやりの世界に向かって走ろうとしているのだこの6畳の床板が剥げるほど それを私は知りたくない 黒猫はただひとりこの世界の王者であって 彼女はどこまでも激しくどうしようもなくただひとり ひとりとひとりをベランダの柵の上に 並べて 置いて 私は床に這いつくばってそのままドライホモサピエンスになってやる