美しいものは儚くて、汚れたものが生きる

泣くっていいことだ
悲しくて涙が出る
それだけで
自分の泣き方が気になったりする

泣かなければ泣かないで
泣かないことが気になりはじめる
泣きやめば泣きやむで
どうして泣きやんだのかと考えたりする

歌うっていいことだ
悲しみを声にする
自分の声が気になる
いい歌にしようとする

言葉にするっていいことだ
悲しみを言葉にする
自分が何を言うかが気になる
自分に正直になろうとする

悲しむ人になってみるっていいことだ
自分の中に確かにあるものを取り上げて
ひとつひとつ大事にする
悲しんでいない自分に気づいたりする

自分のことが気になりだすのは
今ということに冷めていて恐ろしいと
思ったりもするけれど

冷めてなんかいるもんか
夢中になってどうすんだ

生き物にもならず
歌うたいにもならず
詩人にもならず
役者にもならなくて
生身のままで夢中になって
それでその先になにがある
ああ、美しい、くやしい、くやしい、

せめて生き物で
せめて歌うたいで
せめて詩人で
せめて役者で
生身でいるより汚れてたって
それで死なずにすむんだから
そういうのだっていいじゃないか