落ち葉の手記 音痴の鳥より

森で一番若いかつらの木
そこへ行けば3べんに1回は彼に会えます

彼は毛むくじゃらの奥にお月様をふたつ浮かべて私を見上げますが
目が合うのはいつもすこし

私は、彼に会うとほんのすこし、鳴いてみることにしています
彼は、陽炎の音みたいな音色でいつも独り言をします
そうして、うんうんそうかそうかといった具合にうなずくのが癖のようです

彼はいつもこの村の集まりをさぼって来ています
でも私には、それが彼の仕事なのだと分かるのです
彼も、私が頼りない枝に宿るわけを知っていそうなかんじです

昨夜もここに来ましたがお星様までひとつとない夜でした
まっくら闇にすこし安心して
はじめて思いのかぎりなきました

もうこれきりにしようと思ったその時
陽炎の音色が地面のほうからあらわれて
思わず震えた私の耳に
シバシバさせたふたつのお月様がまあるくまっすぐに差し込んで

うつくしいねいろだ

絶対にそう言ったのです
私は葉の付いていないよくしなる枝を、
何度も何度も、何度も何度も揺らして揺らして、
こっそりこっそり嬉しがりました



「うつくしいねいろだ」
美しい音色だったな